マツザカよりマツモト。ホークス昨季ドラ1松本裕樹がベールを脱ぐ (2ページ目)

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro
  • スポルティーバ●写真 photo by Sportiva

 しかし、3年夏の岩手県大会決勝で右ヒジを痛めた。そのままの状態で乗り込んだ甲子園では豪速球を投げられなかったが、優勝候補の東海大相模高校を相手に3失点完投勝利を収めた。だが、続く敦賀気比高校戦ではもう右ヒジがパンク状態。9失点と打ち込まれて敗退した。

 そのため松本の獲得レースから撤退する球団が相次いだが、ソフトバンクは評価を変えなかった。ドラフト直後、当時の球団フロント幹部から「今だから話すけど、ウチは相当早い段階から松本一本に絞っていたからね。故障はあるけど時間をかけて万全の状態にすれば、ホークスでもエースになれるほどの存在だよ」と打ち明けられた。

 昨年、ソフトバンクのリハビリ選手を指導する斉藤学コーチは、松本のキャッチボールを見ただけで、その豊かな才能に確信をもったという。

「投げ方もボールの回転も、はっきり言ってモノが違う。本人は早く投げたい、試合に出たいと思っていただろうけど、とにかく焦らせないようにしました」

 そして今春のキャンプ、松本は1年間の沈黙を破るようにブルペン入りを繰り返し、順調な調整を見せている。「今は本当に野球が楽しいです」とポーカーフェイスの19歳がはにかんだ。

 打撃投手のときに話を戻す。打席に立ったのは、昨年トリプルスリーを達成した柳田悠岐だった。昨オフに右ヒジを手術した関係でB組調整する強打者と対決する機会に恵まれたのだ。

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