パドレスのインターンで見習い中。斎藤隆が目指す「野球人の仕事」 (4ページ目)

  • 田澤健一郎●文 text by Tazawa Kenichiro
  • 田口有史●写真 photo by Taguchi Yukihito

 今、斎藤氏はかつて抱いていた疑問が少しずつ氷解していくことを実感している。

「同じデータでも認識や扱い方は球団によって違います。パドレスのいいところはセイバーメトリクスなど最新のデータとオールド・スカウトの意見、どちらも大切にする点。で、最後はAJが独自の評価基準で決断する。そのすべてが僕には勉強です」

 もし将来、本格的に指導者となる時が来るなら、ここで学んだ選手評価がバックボーンのひとつになるかもしれない。斎藤氏はそんなことを思いながら今日もデータを整理し、球場に足を運ぶ。

「ただ、この先どうするかはまだわかりません。わからないから今の選択をしたわけですしね。この1年の経験で、今の自分にはない新しい何かを得れば、身の振り方も変わるかもしれない」

 ところで、パドレス入りの際、斎藤氏の肩書きは「インターン」と報じられていた。インターンは「無報酬の実習生」を指すことも多いが……。

「いや、厳密にはインターンではないのですが、うまく説明する言葉がなくて……まあ、いちばん意味が近いかなと。AJにも『インターンは違うだろう』と言われたんですけどね(笑)」

 うまく説明する言葉がないのは、ある意味、パイオニアである証(あかし)だ。過去、斎藤氏ほどの実績がありながら、「見習い」的にメジャー球団に入り、編成を学ぶといった道を選んだ日本人選手はいなかった。多くは語らなかったが、斎藤氏の話からは選手の新しいセカンドキャリアの模索という意識も感じられた。

 大学時代に野手から投手に転向。36歳という高齢での渡米と成功。思えば斎藤氏の野球人生は挑戦の連続であった。そのスピリットは、ユニホームを脱いでも変わらないのかもしれない。この経験も、斎藤氏にきっと大きな実りを与えるだろう。3月の侍ジャパン強化試合でのフィードバックにも期待したい。


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