早くも注目。2016年のドラフト戦線をにぎわす5人の逸材 (2ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 その田中に続く存在として挙げたいのが、柳裕也(明治大/投手/右投右打)。田中とは対照的なピッチングスタイルの右腕だ。

 スピードガンでの球速は140キロ前後だが、快速球と呼ぶにふさわしいキレと威力がある。それに加え、タテのスライダーに微妙に動くカットボール、さらにツーシームに100キロ台のカーブもある。このカーブがドロンとした軌道ではなく、キュッとタテに割れて、打者にとってはとにかく厄介なボールだ。

 見た感じは地味かもしれないが、こういう投手が意外と相手打者を苦しめる。柳自身、緩急を意識し、駆使しながら投げているのも頼もしい。

 投手にとって、一番大事な仕事は打者のタイミングを外すことだ。田中が詰まらせてタイミングを外そうとするタイプならば、柳は前のめりにさせてタイミングを外すタイプ。

 そんな柳に心配な点があるとすれば、ストライクを集めすぎること。投球の中でストライクが多すぎるあまり、打者は待ちやすくなってしまう。東京六大学のリーグ戦でも、カウント球が甘く入る場面を何度も見ており、少々タイミングが外れてもパワーで持っていってしまうプロの世界では、よりいっそうの用心深さが必要になる。

 高校生に目を移すと、まず真っ先に名前が挙がるのが寺島成輝(履正社高/投手/左投左打)だ。これほどのスケールと技術、将来性を兼ね備えた投手を久しぶりに見た。

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