前田健太の両親が語る「仮面ライダーが世界のマエケンになる日」 (4ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 思い出深い少年期から、プロ注目の選手となった高校時代を振り返ってもらうと、ふたりは周囲への感謝を口にした。

「岸和田イーグレッツも(中学時代の野球チーム)忠岡ボーイズもPL学園も、本当に健太にとっていい環境に恵まれました。指導者、チームメイト、父兄……。いい人たちに囲まれて思い切り好きな野球をできたことを、これからも絶対に忘れたらアカン」(治茂さん)

 そしてなにより、野球小僧・前田健太を支えた原点が温かな前田家にあったことは、誰より前田本人が感じてきたはずだ。

 その息子がいよいよ海を渡ろうとしている。治茂さんは言う。

「日本で長くやってほしいという思いも、親としてはありますけど、本人は当然、上のレベルに挑戦したいでしょうから。どうなるかは行ってみないとわからないですけど、親からすれば『思い切って勝負してこい』と。それだけですね」

 幸代さんは前田が高校進学の際、東北の学校へ進む話が出ると、「東北は寒いよ……」「遠いよ……」とポツリつぶやいたという。できれば近くで見ていたい、との思いがついそうさせたのだ。それが今回はアメリカ。

「自分の子どもがプロの選手になるというのは、『寂しいものでもあるんやなぁ』と思うときがあります。でも、健太自身は新しい環境に馴染めるタイプやと思いますし、頑張ってやると思います」(幸代さん)

 ダルビッシュ有や田中将大らの挑戦時に比べれば、メジャー側の評価もそこまで高くはない。それでも幸代さんは「そういうときにやるのが健太なんです」と力強く語った。

 またゆっくりアメリカの話でも聞けたら……。両親は最後に声を揃えたが、次に前田が故郷を訪れるとき、どんな報告をするのだろうか。

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