2015.12.20

【根本陸夫伝】
日本シリーズのたびに自腹で300万円分のチケットを買った男

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki
  • photo by Kyodo News

 そんな根本が、ダイエーの球団社長に就任した1999年の1月。スカウト会議が終わった後、大田は根本の部屋に呼ばれ、ふたりで話した。またもや半ば唐突に、こんなことを言われた。

「タク、人間ってのはなあ、本当のことをずばり言われると、いちばん傷つくんだよ」

 誰にでも怖いものなしでストレートに言い放ち、本当のことを言ってなにが悪い、と思っていた大田にとって、この言葉は身にしみた。まして大田自身も、本当のことを言われたら傷つく、と気づかされた。根本はさらに続けて言った。

「人間、本当のことを言うと角が立つ。でも、その角は削らなくてもいいんだよ。なあ、タク、名刺でも角があるだろ? その角をね、丸く広げていきゃあいいんだよ。削ると小さくなってしまうから。要は、自分の性格はそのまま残していいんだから。それをね、広げていきゃあいいんだよ。そうしたら角がなくなって、丸くなるじゃないか」

 言葉の意味としては理解できたが、どう実践していけばいいのか、大田にはわからなかった。そして結果的に、根本とはこのときが最後になった。3カ月後、4月30日に根本が急逝したのだ。

「あの日、オレ、家で寝ていてね、ガーンと頭をハンマーで叩かれたような感覚があった。なんか、わけわからないけど。そうしたら、後々考えたら、オヤジはその時間に亡くなってる。これにはびっくりしたね。それでオヤジのご遺体が博多から帰ってきて、家まで行ったんだけど、そのときはオヤジの姿見ても涙が出ない。ところがね、葬儀の時、オレ、受付をやってたんだけど、長男の謝辞を聞いて涙が止まらなくなった。声上げて泣いていました」