元世界一・里崎智也に聞く「日本代表の正捕手をどう育てるか?」 (2ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Getty Images

 データと自分の感性が真逆になった時は、感性を信じた方が絶対にいい。06年のWBCの時は、データはほとんどありませんでした。バッターの反応を見てリードしていました。「タイミングの取り方が遅いから速い球は打てない」とか、「タイミングの取り方が早いから変化球でいった方がいい」とか。あとはバットの出方を見て、ボールを決めていました。

 今でも覚えているのが、第2ラウンドのメキシコ戦で松坂大輔に8球連続してインコースを投げさせたことです。周りはその打者の情報を知っているから「やられるぞ」と思っていたはずです。でも僕は、その打者の構え、バットの出し方を見て、「絶対にインコースは打たれない」という自信がありました。

 もちろん、データは必要ですよ。家でたとえるなら基礎ですから。そこはしっかり作る。その上に自分の感性で柱をどれだけ建てられるのかが重要になってきます。で、その家が崩れたら基礎に戻ればいい。これが基礎だけで勝負していると、崩れた時に帰る場所がなくなってしまう。自分の感性でやって、データは困った時の逃げ道ですよね。

 これまで日本代表は3度のWBCに出場したが、06年は里崎氏、09年は城島健司氏、そして13年は阿部慎之助と、絶対的な捕手が存在していた。しかし、今回のプレミア12では嶋、炭谷銀仁朗(西武)、中村悠平(ヤクルト)の3人が日本代表に選出されたが、先発マスクは嶋が5試合、炭谷が3試合。要するに、今回の日本代表には絶対的な捕手がいなかったということだ。

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