なんと6度目のトライアウト。大平成一を支える「鬼嫁」の愛 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text&photo by Kikuchi Takahiro

 当人からの思いがけない問いかけに、事前に調べたデータを疑ってしまう。メモを読み返すと、大平がトライアウトを受験したのは2011年に2回、2012年に2回、2013年は1回、2014年は0回とある。間違いなく、今回が6回目の受験だった。

「トライアウトを1回受けるのに、自分自身を奮い立たせる、強い気持ちがないと受けられないのではないですか?」。そう大平に問うと、彼は涼しい顔で「そうですか?」と返してきた。

 やや肩透かしを食らいながら、「では、今回のトライアウトを受験したのは自然な流れですか?」と聞くと、「まあ、そうですね」と一言。文字にするとぶっきらぼうに感じるかもしれないが、口調はいたって穏やかだった。別段、怒っているわけではなさそうだ。

 率直に聞いてみた。「大平さんは、なぜトライアウトを受けるのですか?」。すると、大平はこちらの目を真っすぐ見て、こう答えた。

「プロではやり残したことばかりでした。一軍には1回も上がれなかったし、いい思いもできませんでした。でも、キャンプやオープン戦までは一軍に帯同できた年もありました。もうあと一歩、いけるんじゃないか......と。可能性はゼロじゃない。1%でもある限り、やりたいと思っています」

 日本ハムでプレーした4年間、自分なりに一生懸命やったつもりだった。しかし、戦力外通告を受け、恵まれた練習環境を失ってから、自分の甘さに初めて気づかされる。もっと練習しておけばよかった......。しかし、時間はもう戻ってはくれない。

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