川端、山田、畠山。史上初の「バラバラ三冠王」を達成した3人の思い (5ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 開幕直後、山田は「今年は相手から嫌がられる野球選手を目指したい。そういう選手がチームでも信頼される選手だと思います」と語っていたが、まさにその通りの選手へと成長した。三木コーチは言う。

「守備に関していえば、昨年までならダブルプレーにならなかったものが、今年は取れている。相手にしてみれば、ヤクルトと対戦して、ゴロを打たされるとダブルプレーの確率が高くなる。守備に関しても、走塁に関しても、そういう見えないプレッシャーを相手に与えることは、自然と『ヤクルトと対戦するのは嫌だなぁ』と思わせているのではないでしょうか」

 さて、ファンの中には山田の三冠王を期待した人もいただろう。三冠王達成はならなかったものの、そんなすごい打者とタイトルと争ったのがチームメイトであり、それこそ今年のヤクルトを象徴する出来事だった。たとえば数十年後にプロ野球の記録を眺めた時、2015年の優勝チームはヤクルトとあり、打撃タイトルの項目には川端慎吾、山田哲人、畠山和洋の名前が並んでいるのである。それを見れば、2015年シーズン中に見た神宮球場での練習風景を懐かしく思うはずだ。

 早出のティーバッティングで山田が汗を流し、その横で順番待ちをしている川端が練習を眺め、時おり楽しそうに会話を交わしている。そこへバットをぶら下げた畠山が近づいてきて、山田と川端を見て「オレもこの中に入れば打てるかな」と、無邪気な笑顔を見せていた。山田は前日、川端は前々日にそれぞれ4安打を放っていたからだった。3人とも高卒でヤクルトに入団し、年齢は5歳ずつ離れているが、じつにいい関係を築いているように見えた。

 この3人が残した偉業は、これからも語り継がれるに違いない。

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