14年ぶり優勝。ヤクルトの選手たちを動かした「真中イズム」 (5ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 一方、選手たちはこのように語っている。

「昨年は1点を恐れて、初回から試合終盤のようなリードをして、3~4点取られるケースがたくさんありました。今年は試合前のミーティングでカツノリさん(野村克則バッテリーコーチ)が『ソロ本塁打なら仕方がない。腹をくくれ』と言ってくれるので、思い切ったリードができています」(中村悠平)

「真中監督からは技術的なことを言われることはありませんが、『思い切っていけ』とか『右打ちとかはしなくていいよ』という言葉をもらっているんで、打席で迷うことがないです」(山田哲人)

 天王山となった9月27日の巨人戦(東京ドーム)は、真中監督が目指してきた野球がまさに実現した試合だったのではないだろうか。1回表、先頭打者の上田剛史が出塁すると、2番の川端はバントで送るのではなく強攻策。結果、ショートゴロに終わり、初回は無得点に終わったが、「ブレることなく、これまでやってきたことができた」と三木コーチは胸を張った。

「ベンチで監督たちと話した結果、『慎吾に任せよう』と。あそこは、監督も僕らも『やり切る』ことが求められた大事な場面でした。あそこでバントのサインを出せば、選手たちは今までと違う作戦なので戸惑ったでしょうし……」

 その一方で、5回表の無死一、二塁のチャンスには、8番の中村に送りバントのサインを出し、投手である石川雅規に勝負を託したのも大胆な作戦だった。試合後、真中監督はこの場面を次のように振り返った。

「中村の調子もありますが、巨人はスクイズをかなり警戒するチームなので、まずはランナーを三塁に進めてからどうしようかを考えました。石川はバットに当てるのがうまいので、最低でもゴロを打ってくれるイメージがありました」

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