14年ぶり優勝。ヤクルトの選手たちを動かした「真中イズム」 (4ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 試合を線として考えることが、今年のヤクルトの特長である「粘り強さ」にもつながっている。ショートの大引啓次は昨年オフにFAでヤクルトに入団。春のキャンプで「チームのために何がしたいか?」という質問に、こう答えた。

「(ヤクルトの)選手たちと話をして、昨年の悔しさをすごく持っていると感じました。その悔しさをどう表現するのか。試合終盤にリードされていて、『今日も負けか』と思えば、そこで終わってしまいます。負けている試合でも、最後まであきらめずにボールに食らいつく姿勢が浸透すれば、強いチームになっていくと思います」

 そして指揮官である真中監督も同じようなことを言っていた。

「失点しても、『何とかそこで食い止めよう』ということは口を酸っぱくして言っています。それが終盤の逆転につながりますから。負けていたとしても、次の1点を防ぐことで相手チームの継投も変わってくる。そうなれば、次の試合にも影響が出てきます。そういう意味で、今年はビハインドの場面でも集中力を持った守りができていると思います。昨年はプチッと切れて、そのままズルズルといってしまいましたから」

 今シーズンのヤクルトの粘り強さは、以下の数字が証明している。

逆転勝ち/31試合(リーグ最多)
延長戦勝敗/8勝1敗1分(リーグ最高勝率)
サヨナラ勝敗/6勝1敗(リーグ最高勝率)

 ちなみに、昨年の延長戦の勝敗は2勝10敗3分で、サヨナラ勝敗は1勝6敗である。この終盤での粘り強さがヤクルト躍進の大きな理由になったことは疑いようがない。

 また、今シーズンのヤクルトにおける最大の武器は、監督をはじめとする首脳陣と選手たちの強い信頼関係だろう。真中監督は言う。

「(一軍の)監督としては1年目ですが、ファームで監督をしていましたし、一軍でも打撃コーチをしていたので、選手たちの性格は把握しているつもりです」

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