2015.09.21

【根本陸夫伝】
試合中にもかかわらず下柳剛を延々と説教した男

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki
  • photo by Kyodo News

 確かに、毎日のバッティングピッチャーは効果があった。だが、予告先発ではない当時、ナイターで、しかもリリーフで投げた翌日、球場に着いた途端に先発を言われたのはまだいいほうだ。ある時は試合直前まで何も告げられず、場内アナウンスによる〈スターティングバッテリー発表〉で初めて当日の先発を知ったこともあった。根本が通達を失念していたのか、下柳ならそれでも大丈夫、と思っていたのか。

「いやもう、周りでそんな扱いを受けてるピッチャーは誰もいなかったですから。時代は平成になっているのに、オレに関してだけは、昭和20年代、30年代の野球をやっているような......。それでも自分の場合、体の強さに自信があるからできちゃったんですけどね。ただ、さすがにあの時だけはびっくりしました」

 93年9月28日の日本ハム戦。翌日の先発が決まっていた下柳は、ベンチに入って試合を見ていた。7回で3対6と3点リードされた時、根本から指示が飛んだ。

「おい、シモ。明日、先発だけど、肩慣らしだ。行ってこい」

(=敬称略)