2015.09.02

【根本陸夫伝】
主力を放出してまで田淵幸一の獲得にこだわった男

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki
  • photo by Kyodo News

 一方、ロッテとの2対2のトレードでは、内野手の山崎裕之と投手の成重春生を獲得し、古賀正明倉持明の両投手を放出した。打っては1、2番、守っては名二塁手の山崎を獲れたのは確かに大きかった。しかし交換要員として古賀と倉持をロッテに要求され、受け入れたことはどうだったのか。前述のインタビューでその点を問われた根本は、「ウチは痛いんですよ。だいぶ出血しているんです」と正直に答えた。「バッテリー間を先に作り上げるという考え方からすれば、やっちゃいかんことなんですけどね」とも明かしている。

「バッテリー間」といえば、西武はその時、ロッテを自由契約になった野村克也を獲得。78年まで通算で648本塁打、2843安打と実績は凄まじいが、翌年には44歳になる肩も打力も衰えたベテラン捕手をなぜ獲ったのか。実は根本自身、獲得に積極的ではなかったそうだが、松沼博久雅之兄弟をはじめ、若い投手たちにとっては必要な存在になっていく。

 短期間でこれだけ入れ替えた主力選手について、のちに根本は一人ひとり丁寧に語っていた。88年3月発行の総合スポーツ誌『Number』(文藝春秋)が「祝 西武ライオンズ10周年 獅子の咆哮」という特集を組んだ中、ノンフィクション作家の木村幸治による取材記事を掲載した。題して「人物列伝 西武開拓史上の男たち」。根本自身による具体的な選手評は極めて希少であり、以下、一人ずつ掲げておきたい。