デストラーデ「野茂は人間だけど、イチローはエイリアンだね」 (2ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Kyodo News

―― 野茂さんと対戦経験があっただけに、他の選手からアドバイスを求められることはなかったですか?

「カルロス・バイエガ()をはじめ、何人かのラティーノの友人たちがアドバイスを求めて来たよ。僕は『野茂は本当にすごい投手で、私もいっぱい苦しめられたんだから、あなたも同じ苦しみを味わいなさい』と。野茂さんの攻略につながる秘訣を知っていたんだけど、あえて教えなかったんだ(笑)。1年後、バイエガは『野茂は本当にすごかった』と言ってきたよ(笑)」
カルロス・バイエガ...90年~00年にかけてインディアンスやメッツなどでプレイし、シルバースラッガー賞を2度獲得した好打者。

―― 野茂さんがメジャーに挑戦してから20年、日本とメジャーリーグの距離はグッと近くなったと思います。

「野茂さんが大きな橋を渡ったから『自分もメジャーリーグに行ける』と、あとに続く選手が出てきた。イチロー松井秀喜も強いマインドを持った選手だったね。新庄(剛志)は、打率などを見ると決していい選手ではなかったけど、彼らと同じく強いマインドを持っていた。だからメジャーリーグでもプレイできたと思うんだ。今の日本人の選手は子どもの頃からメジャーリーグを目指している。20年前とは全然違う。そういう強いマインドがあるから、日本はワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で2度のチャンピオンになれたんだよ」

―― 野茂さんから数えて、日本人メジャーリーガーの20年の歴史で、投手は安定した活躍を見せていますが、野手は厳しいように感じます。最近は試合に出ることも難しい状況です。

「こればかりはケガでどうにもならないこともあるし、契約の大きさがプレッシャーになっていることもある。ただ基本的なことを言えば、日本人野手にとってメジャーリーグはとてもタフな場所だということだね。メジャーリーグは30球団あって、1チームにつき12人ぐらいの投手がいる。日本とは投手の数が全然違う(笑)。これだけの投手の情報を勉強するのは大変なことだよ。だからこそ、松井秀喜は素晴らしい選手だと思うんだ。しかも、ヤンキースという名門でスターになった。彼は本当にスマートな選手だったね。ホームランは打者にとって魅力のあるものなんだけど、松井はそれを犠牲にして打点や得点が大事だと理解していた。だから、ジョー・トーリやデレク・ジーターは、松井のことが好きだったんだ」

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