西武・秋山翔吾は愚直に打撃を究める「修行僧」か!?

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

「では、秋山翔吾でいこう!」

 ようやく結論が出て、お母さんと野球部の了承を得て、取材が始まった。制作スタッフたちは、学生野球選手としての彼の日常を追い、私も何度か同行して八戸を訪れた。

「本当に自分なんかでいいんですか?」

 初対面の時、彼がそう言ったのを今でも忘れない。

「自分がそこまでの選手じゃないっていうこともよくわかっているし、今のプロ野球に左打ちの外野手がたくさんいることもわかっています。正直、指名される可能性は低いと覚悟していますが、もし指名されたらこんなに嬉しいことはないですね。自分、必死で頑張ることにかけては、自信を持っていますから」

 そして、少し小さな声でこう付け加えた。

「死んだオヤジとの約束でもあるし……」

 父の肇さんは秋山が小学校6年の時にガンでこの世を去っていた。

 プロに入ってからの秋山を4年間追ってきて、私なりに“逸材の片鱗”を感じることが何度かあった。

 1年目から開幕スタメンで起用され、2年目にはレギュラーを獲得。その後もチームの主力として活躍するなど、至極順調に成長しているように見えるが、もちろん “紆余曲折”はあった。そのたびに感じたのが、秋山のしぶとさだった。

 打率が下降線にある時でも、必ずなんとか1本は打つしぶとさ。何試合かノーヒットが続き、「そろそろ控えに回そうか」「しばらくファームで調整させようか」と首脳陣が思った時に必ず2本か3本、時には4本の固め打ちをして踏みとどまれる人間としての芯の強さがあった。

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