西武・高橋光成が「群馬の野生力」を取り戻し急成長中 (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Sportiva

 秋から冬にかけては、遊び場を川から山に移した。荒井監督が同校野球部に所属する弟・亮成に「兄ちゃん、どうしてるんだ?」と聞くと、「猿を追っかけています」という答えが返ってきたという。荒井監督は、「そりゃあ体も強くなるよな」と感心したそうだ。

 本人に確かめてみると、「そんなことはないと思うんですけど……」と苦笑いを浮かべて、こう続けた。

「少しの間、実家から通うことができたので、地域の人とお話ししたり、リラックスしたり、すごくいい時間が過ごせたと思います」

 自然豊かな田舎町に戻った少年が、かつての野性味を取り戻してプロで躍動する。ときめきを感じずにはいられない漫画的なストーリーだが、さすがにメンタル面ばかりを急成長の要因とするのは性急かもしれない。

 現在、西武のファームで指導にあたる清川栄治コーチが、高橋を初めて見たのは高校2年時。甲子園のテレビ中継だったという。

「上背があって球も速いし魅力的な素材だと思いましたけど、特に印象的だったのは変化球のコントロールが良かったことです」

 清川コーチの第一印象も、やはり「変化球」だった。入団後、新人合同自主トレでブルペンに入った高橋を見ると、「一球一球のバラつき」を感じたという。

「マウンドのプレートに対して、軸足(右足)が平行に入っていなかった。足の向きが傾いていると、軸足で立った時に体が回転し過ぎて、リリースまでに戻すのが大変なんです。それがバラつきにつながっていると感じました」

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