ホークス快進撃を支える工藤流「投手育成」采配 (4ページ目)

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 最近、一部で話題になったが、今季のホークスはエンドランのサインが出ても「叩きつけて走者を進める」のではなく、「しっかり自分の形で打って、強い打球でヒットを打ちにいく」という野球の常識とは少し違う考え方を選手たちに伝えている。走者二塁より、走者一、三塁の方が苦しいという、自らの経験が根底にある。すべては「投手目線」の野球なのだ。もちろん、打球が二遊間に飛びダブルプレイになった場面もある。それでも工藤監督は選手を叱り飛ばすことはしない。

 また、若い投手が打たれた時も「何が悪いから打たれた」と責めない。いい真っすぐを持っている投手ならば、「打たれても僕が責任を取るからストレートを思い切り投げてみろ。自分の武器であるストレートを投げないで打たれるのは違うと思う」と背中を押す。

 工藤監督は選手がのびのびとプレイできる環境を作っているのだ。アプローチの仕方は違うが、いい意味でホークスの伝統を引き継いでいると言える。

 リーグ戦再開後の首位攻防戦で3連勝し、首位に浮上したホークスはじわじわと差を広げつつある。だが、昨年は9月に大失速。結果的にシーズン最終戦で優勝を決めたが、薄氷の勝利だった。それでも工藤監督はニヤリと笑う。

「先発の頑張りもありますし、(ブルペン担当の)吉井理人コーチがプルペンでの球数を軽減するなどの対策を常にとってくれているので、コンディションが崩れることは少ないでしょう」

 工藤監督が目指す野球が選手に浸透しはじめ、首位を快走するホークス。昨年とは違う強さが、今のホークスにはある。

4 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る