ホークス快進撃を支える工藤流「投手育成」采配

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 これはシーズン前、工藤監督に先発投手の起用方針について聞いた時に返ってきた答えだ。長いシーズンの中では、良い時もあれば悪い時もある。苦境に立たされた時にどう乗り切るのか。そうした経験を数多く重ねなければ、先発ローテーションを1年間守り切る投手になれない。さらには、何年も好結果を継続できる投手になることはできないという自らの経験があるから、工藤監督はベンチを飛び出したくなる気持ちをグッとこらえるのだ。

 5月1日のバファローズ戦でも中田は4回までに6四死球と制球に苦しんだ。それでも工藤監督は続投させ、なんとか5回を2失点で切り抜けた。結局、白星はつかなかったが、チームは勝利したため、先発の役割はきっちり果たしたといえる。ちなみに、その後の登板で中田は3連勝を飾った。

 もうひとり、我慢強く起用されているのが4年目の右腕・武田翔太(22歳)だ。シーズン序盤は白星が伸びない時期もあった。4月29日のファイターズ戦と、続く5月6日のマリーンズ戦はいずれも5失点と乱れた。それでも7回途中までマウンドに立ち続けた。球数もそれぞれ116球、125球とたっぷり投げた。

 5月21日のバファローズ戦も7回途中122球の熱投。この日は3失点にまとめて約3週間ぶりの勝利を手にした。それ以降は順調に白星を積み重ね、6月26日現在、6勝をマークして先発ローテーションに欠かせない投手となっている。

 工藤監督が大切にしているモットーは、「明るく、真剣に」。

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