巻き返しに自信。オリックスナインが語る絶大な「金子効果」 (2ページ目)

  • 波佐間崇晃(オリックス・バファローズ球団映像アナウンサー)●文 text by Hazama Takaaki
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 そうして手にした6月6日の白星だったが、試合後に話を聞くと「ボールは徐々に低めに集められるようになりました。でも正直ボールのキレはまだまだです。ボールの質をさらに上げていきたい」と課題を挙げていた。続けて「昨シーズンの状態までどれくらい戻ってきたのか」と質問をすると、意外な答えが返ってきた。

「腕を手術前の状態に戻していくという気持ちはありません。投球において大切にしているのは体の"状態"よりも"感覚"。ゼロからひとつずつ新しいものを積み重ねていく感じです」

 金子は登板間に独自の調整を行なうことで知られる。通常、プロの先発投手は登板と登板の間に一度ブルペンに入って投球練習を行なうのだが、金子はそれをしない。なぜなら、「肩やヒジは消耗品であり、できるだけ負担の少ない調整法で最大限感覚を研(と)いでいく」という持論があるからだ。その分、登板前のキャッチボールでは変化球も含めて1球1球入念にボールを投じ、指先から体全体の感覚を磨き上げる。練習であっても、金子には常にピンと張りつめた緊張感がつきまとう。

 そんな金子に影響を受けているのが若手投手陣だ。ドラフト1位ルーキーの山﨑福也(やまさき・さちや)は現在二軍調整中だが、金子が一軍に復帰した翌週の5月29日に一軍に昇格すると6月5日の中日戦で待望のプロ初勝利。6月12日の阪神戦では6回無失点という好投を披露した。

 その山﨑は「金子さんはひとつひとつの準備がじっくりで、丁寧なんです。ひとつひとつの動きに惰性がありません。特に驚いたのがキャッチボール。しなやかだけど、力がこもっていて、ボールの回転が本当にきれいなんです。金子さんの姿を近くで見られるのは、投手として贅沢なことです」と目を輝かせる。

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