2015.06.21

【根本陸夫伝】
王貞治を「ラーメン屋のせがれ」と言い放った男

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 森脇がコーチになった後も、根本はしばしばグラウンドにやって来た。指導者全員を集めて話をする時もあれば、現役時代と同様、個人的に森脇が呼ばれる時もあった。必然的に、選手の時とは違う話が出る中で、特にこの言葉が印象に残っているという。

「組織っていうのは、常々、窮屈なものなんだ。窮屈な中で、どれだけ仕事ができるか、能力を発揮できるかを問われているんだ。そこでしっかり仕事する者こそ、本当のプロの仕事人であって、窮屈さのあまり仕事ができないとなったら、それはアマチュアなんだよ」

 また、森脇が育成担当コーチから二軍内野守備コーチになった時には、こんな教えを受けた。

「人と会う時は、いろんな角度からその人を見なさい。一側面だけを見ていたら、本来の良さを見つけられないかもしれない。だから多面的に人を見なさい。それができないなら、何もするな」

 そうして森脇が二軍で指導者経験を積む間、97年、チームは前年の最下位から4位に浮上。そして翌年はオリックスと同率ながら3位に入った。しかし、この年の12月に"スパイ疑惑事件"が発覚。翌99年1月に事態収拾を図るために村上弘球団社長が辞任すると、新球団社長に根本の就任が発表された。

 球団が危機的状況に陥(おちい)ったなかでまさに「心強い人」だったわけだが、森脇によると、根本は就任早々、王はじめ首脳陣が顔を揃えたコーチ会議でこう言ったという。