DeNAの守護神・山﨑康晃、取り戻した「2年前の感覚」 (2ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 この絶体絶命のピンチで山﨑は全球ストレートの真っ向勝負を挑み、最後は空振りの三振で仕留めたのだ。3人のランナーを背負っているにも関わらず、山﨑の視線には打者と捕手しか入っていなかった。集中力とか、そういうレベルではない。そのマウンドでの姿に狂気すら感じ、背中がゾクッとしたのを覚えている。最初から三振を狙いにいっているから、相手打者はその勢いにつられて振ってしまう。

「こういう攻め方もあるんだ......」

 ネット裏で見ていたこっちも勉強させられた。同時に「プロでも抑えとしてやっていける」と確信した。当時の私の評価はこうだった。

<2足分ほどインステップして投げるスタイルは、長いイニングを投げると下半身に負担がかかるが、短いイニングなら武器になる。特に右打者にとっては、背中の方から来る感覚になるため厄介な投手だ。足もとにストンと落ちるようなツーシームは、かなりの確率で空振りが奪える球だ>

 150キロ近いストレートにスライダー、そしてツーシーム。常に全力投球の力投派だけに、先発で長いイニングを投げるより、抑えの方が適役と考えていた。間違いなく、翌年(2014年)のドラフトの超目玉になるはずだと思っていた。

 ところが、4年生になった山﨑は不安定な投球を繰り返した。たとえば、完封で15三振を奪う好投を見せたかと思えば、2日後、同じ相手に5回4失点で降板。延長11回をひとりで投げ抜き、被安打2の完璧なピッチングをしたかと思うと、次の登板では4回を被安打6、失点2で元気なくマウンドを降りる。3年の秋に見せた「あの迫力」は完全に消えていた。どっちが本当の山﨑なのか、正直わからなかった。

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