野球人生初のキャプテン。オリックス糸井嘉男の「苦悩の1カ月」 (2ページ目)

  • 波佐間崇晃(オリックス・バファローズ球団映像アナンサー)●文 text by Hazama
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

「打撃フォーム、練習方法、体のケアの仕方など、稲葉さんの背中から大切なことをたくさん学ばせてもらった。僕にとって稲葉さんは先生であり、兄さんみたいな存在」

 ただ糸井は、「オレは口下手やから」と言うように、ミーティングなどでチームに檄を飛ばすことはない。その分、ひたむきに野球に取り組むことで周囲を鼓舞する。これまで6シーズンで3割をマークしている糸井だが、特筆すべきは圧倒的な練習量だ。

 宮崎県・清武町で行なわれた今年の春季キャンプでは、全体練習を終えるとロングティーを敢行。連日、日が暮れるまで汗を流した。球場に訪れたファンだけでなく、オリックスの選手たちもその姿に見入っていた。糸井と同じ外野手でレギュラーを目指す駿太はこう語っていた。

「能力も実績もある糸井さんがあれだけ練習するんですから、僕はもっと追い込んで練習しなきゃという気持ちになります」

 駿太の右ヒジには糸井とお揃いのサポーターが装着されている。打撃や送球の際に負担がかかるヒジをカバーするもので、糸井のアドバイスで着けるようになった。知らず知らずのうちに、若い選手たちは糸井の背中を追うようになっていた。

 そして迎えた2015年シーズン。思いもよらぬ苦難が待ち受けていた。オリックスは開幕カードの西武戦で3連敗を喫すると、続くソフトバンク3連戦も1勝2敗と負け越し。ビジターロードでわずか1勝しか上げられないまま、ホームへと戻ってきた。

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