斎藤佑樹、失意の降板。唯一の救いは「特別な投手」という評価

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 バッターボックスには6番のルイス・クルーズが入った。斎藤はここでも初球、2球目とボールを先行させ、3球目のインコース低めのツーシームをレフト線へ痛打される。これで2点を還され、試合が落ち着きを失い始めた。

 今江、井口、クルーズの3人はうまく打ったと思う。

 斎藤のボールはきわどいところを突いていて、甘いコースではなかった。いずれもボール先行のツーボールナッシングから投げるには、悪くないボールだ。しかし3人ともに、判で押したように、ボール、ボールと続けた3球目を打たれてしまった。結果よりも、プロセスの中で同じ轍(てつ)を繰り返してしたことが、あまりにもったいなかった。栗山監督が今年の斎藤について、こう言っていたことがある。

「いいボールが行ったときほど、打たれる可能性が高くなる。バッターのイメージ通りのボールには、タイミングが合うからね。自分の中で、いいボールだったのに打たれたとなると、気持ちが差し込まれる。そういうところのコントロールができるようになれば、知っているはずの勝ち方を思い出すはずなんだけど……」

 悪くないコースを打たれた。それなりの手応えはあったはずなのに、ボールが先行したことでほんのわずか、置きにいってしまったのだろうか。とはいえ、気持ちで負けていたわけではない。攻め込んでのボール先行だった。去年までにあれほど勝つことの難しさを痛感させられ、今年の1勝を斎藤がどれほど欲していたのかを考えれば、点差がピッチングを変えたとしても「しゃあない、わかるけどね」(栗山監督)という部分はある。姿勢でなく、局面だとするなら、やはり交代は早かったように思う。試合後の栗山監督はこうも言った。

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