復帰初登板&初勝利。広島ナインが語る「黒田効果」 (2ページ目)

  • 前原淳●文 text by Maehara Jun
  • photo by Kyodo News

 3月8日、初登板となったヤクルトとのオープン戦で、黒田は4回1/3をパーフェクトに抑えた。ストライク先行の攻撃的な投球で常に主導権を握った。打者13人に対して、わずか39球で終える投球に羨望の眼差しを送る投手がいた。チームメイトで、現在の黒田と同じ打たせて取るスタイルの野村祐輔だ。

「球数を少なくするというのは僕の理想。黒田さんも何年かかけてできるようになったことだと思うので、僕もすぐにでは無理でも、見て盗んで少しでも近づいていければと思う」。これ以上ない最高の見本が身近にいる喜びを感じているようだった。

 現在の黒田ではなく、過去の黒田と重なる投手もいる。今季先発6番手を勝ち取った福井優也だ。

 周囲が認めるほどの直球やスライダーを持ちながら、ここまではその期待に応えられていない。1年目の11年に8勝を挙げるも、12年以降は勝ち星が伸びず、13年には中継ぎも経験した。「制球難」というレッテルが貼られ、福井自身が意識するようになり悪循環にハマった。

 昨季から脱力投法に取り組み、シーズン終盤には一軍で4勝を挙げるなどきっかけを掴んだ。今年はキャンプから安定した投球を続け、先発ローテーション入りを勝ち取った。黒田にとって、そんな福井は過去の自分を見ているようだった。

「昔の自分とダブる。カウントを悪くして真ん中に投げるくらいなら、有利なカウントで思い切り勝負した方がいい」

 今では精密機械のような制球力を持つ黒田も、入団当初は力任せの投球で制球面に難があり苦しんだ。入団3年間で12勝。初めて2ケタ勝利を記録したのは5年目だった。

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