ケガにも負けず。中日・山本昌「目標は岩田鉄五郎」 (3ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Kyodo News

 だから山本昌は普段、スライダーの練習をほとんどしない。キャンプでも投げないし、登板間の調整ではまったく投げず、試合前のブルペンでも2球、投げるだけ。それでも試合では大事な武器として使う。つまり山本昌にとってのスライダーは練習しなくても投げられる一番簡単で、しかも自信のあるボールであり、逆に練習をすればするほど、フォームが知らず知らずのうちに“スライダー寄り”になってしまう危険な球種なのだという。山本昌が続ける。

「真っすぐに近いカットボールなら大丈夫だと思っていたんですけど、いざ試合となると、やっぱり曲げたい、もうちょい曲がれば差し込めるのにと考えちゃうんですよね」

 それでも去年、山本昌はカットボールを覚えようとした。それはいったいなぜだったのだろう。

「歳を重ねたせいか、あるいは慎重になり過ぎていたせいなのか、どうしてもボール球を使ったりファウルを打たせたりして、こねくり回しながら投げてたんで、5 回、6回あたりで100球が近づいてきてしまうんです。でもそれだと、先発ピッチャーとしては1イニング足りない。だから早めに勝負できる球が欲しかった。シンカーとかスクリューが頭にあるバッターが振りにきたところを、カットボールで逆に曲げれば、詰まらせて打ち取れると考えたんです」

 それが本末転倒だったと気づいたのは、去年のシーズンが始まってからのことだ。

「4月の頭に、あれっ、真っすぐがおかしいなって……スピードガンの表示は変わらないんですけど、自分のイメージとズレ始めた。キャッチボールも、届くはずのボールが届かない。これはヤバい兆候だって、すぐにわかりました」

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