カープ野球の申し子。鈴木誠也は「キクマル」に続けるか!?

  • 前原淳●文 text by Maehara Jun
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 なんとしても、その時の借りを返したい。今年に懸ける思いは人一倍強い。

「絶対にレギュラーを獲る。あの試合、野村(謙二郎)監督は最後まで僕を使ってくれました。そして試合後、『来年はやれよ』と声をかけてくれたんです。今年やらないと、野村前監督の顔をつぶすことになる」

 昨シーズン終了後、鈴木は第1回IBFAワールドカップの21U日本代表として世界の舞台に立った。12球団の有望な若手が集まる中でも鈴木の存在感は際立ち、打率.423で首位打者に輝くとともに、ベストナインにも選出された。それでも鈴木は「世代別の大会なんで打って当たり前。もっと上を目指さないといけない」と言う。

 オフには丸に弟子入りし、自主トレをともにした。「チームから求められることも似ていると思う」と、同じ外野手で、走攻守に優れ、長打力を併せ持つ先輩から多くのことを吸収した。これまではウエイトトレーニングを中心に筋力強化に努めてきたが、今年は走れる体にシフトチェンジ。緒方監督が掲げる機動力野球に適応する狙いがある。

 今春のキャンプでは、ドラフト1位ルーキーの野間峻祥(のま・たかよし)とポジション争いを繰り広げている。紅白戦ではともに「1番・ライト」で起用されるなど、周囲は競争意識をあおる。しかし鈴木は、「野間さんのことを聞かれますけど、まったく気にしていません。自分ことをやるだけ。今年、レギュラーをつかめなかったら終わりだと思っています」と言い切る。ライバルは野間ではなく、自分自身。これまでの経験と積み重ねてきたものを発揮できれば、ポジションをつかむ自信はある。

「今年のキャンプは自分がやりたいことをやれています」

 キャンプ中は毎日、室内練習場にこもり、遅くまでティーバッティングを繰り返していた。黙々とバットを振り続ける鈴木の姿を見て、今季の活躍を予感せずにはいられない。

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