カープ野球の申し子。鈴木誠也は「キクマル」に続けるか!?

  • 前原淳●文 text by Maehara Jun
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 上出来ともいえるルーキーイヤーを過ごしたにも関わらず、鈴木が満足感を得ることはなかった。

「打ちたいという思いが強すぎたし、『ここで打てば格好いいかな』とか余計なことを考えてしまった。平常心でいることができれば、もっと打てたと思う」

 結局、1年目の成績は11試合に出場し、12打数1安打(打率.083)。だが、この結果がオフの猛練習に駆り立てる糧となった。一軍の舞台を経験したことで目標設定が高くなり、筋力強化と打撃技術の向上にほぼ休みなしで取り組んだ。

 その成果が出たのか、2年目の昨年は36試合の出場ながら打率.344、1本塁打、7打点と大器の片鱗を見せた。シーズン終盤はスタメンで起用されることが多くなり、クライマックス・シリーズ(CS)の舞台にも立った。1年目以上に一軍でやれる手応えを得た。しかし鈴木には悔しさしかなかった。

阪神とのCSファーストステージ第2戦。広島は初戦を落としており、この試合に勝たなければ敗退が決まってしまう一戦。鈴木はスタメン出場を果たしたが無安打。何より悔しいのは、両チーム無得点で迎えた7回表、一死満塁での打席だ。鈴木は阪神・能見篤史のチェンジアップを引っ掛け、三塁ゴロで本塁封殺。続く、會澤翼も三振に打ち取られ、絶好の先制機を逸した。結局、試合は0-0のまま引き分けとなり、広島のCS敗退が決まった。

「僕が打っていれば勝てた試合。内角の球でカントを稼がれて、低めのボール球になる変化球で打ち取られる。ボール球を振っているうちはなかなかヒットがでない。いかにストライクゾーンの球をフルスイングしてとらえるか。ああいう場面で打てるようにならないと......。全然緊張する場面でもなかったのに、足が震えるくらい、緊張してしまった自分がいました」

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