西岡剛「今の心境はPL学園に行けなかった時に似ている」

  • 岡部充代●文 text by Okabe Mitsuyo
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 遠目にもはっきりと分かる。阪神・西岡剛のシルエットが明らかに変わった。本人いわく、「首位打者を獲った2010年と同じ体型」なのだそうだ。翌年からのメジャー・リーグ挑戦を控え、「パワーで負けたらアカン」と心に誓って以来、4年の歳月をかけて作り上げてきた肉体を元に戻す......簡単なことではない。しかし、西岡にはそうしなければならない理由があった。レギュラー奪還のため、ウエイト増の"代償"として失ったスピードを取り戻す必要があったのだ。

レギュラー奪取に燃える西岡剛レギュラー奪取に燃える西岡剛

「パワーをつけて30本、40本とホームランを打てる選手に変化していれば、それはそれで面白いんでしょうけど、スピード系とパワー系に分けたとして、スピード系の選手はどれだけ努力してもホームランバッターにはなれない。そこに改めて気づかされたんです」

 自分を見つめ直して、オフに7キロも減量するきっかけとなったのは、悪夢のような2014年シーズンだった。開幕3戦目の守備中に福留孝介と激突し、救急搬送されるほどの大ケガを負った。壮絶なリハビリを経て、6月下旬には一軍の舞台に戻ってきたものの、キャンプ中にも不調を訴えていた右ヒジの張りや、背中の痛みなども重なって、約1カ月後にファームへ逆戻り。9月上旬に再昇格したが、福岡ソフトバンクとの日本シリーズ第5戦、1点を追う9回の攻撃で一死満塁から一塁ゴロを打つと、本塁封殺と自身の守備妨害でゲームセットとなった。目の前でソフトバンク・秋山幸二監督の胴上げを見せつけられた悔しさは、今も忘れない。

「西岡で始まり、西岡で終わった」と嘲笑気味に言われたシーズン。日本シリーズ終了直後に右ヒジにメスを入れ再起を誓ったが、年内は自問自答を繰り返していたと言う。

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