怪物復活を予感させる、松坂大輔とホークスの「約束」 (3ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Kyodo News

 確かに、復帰したのが古巣でもなく、高校時代に伝説となった横浜のチームでもなかったことから、松坂はカネに転んだのかと言う人がいた。アメリカで上体の力をつけようと体を大きくしたことから、「あんなに太っていて、かつてのようなボールが投げられるはずがない」と断言する人もいた。

 しかし、である。

 ライオンズからは正式なオファーも届かず、ベイスターズは交渉の場で松坂の心に火をつける言葉を発することができなかった。そんな中、ホークスだけが、3年総額12億円という条件だけでなく、松坂の心に届く言葉を語り掛けた。

「世界一のチームを目指している」
「ホークスは長く、強いチームでありたい」
「そのために、若い選手の手本になるのではなく、若い選手のカベになってほしい」

 そんな熱い言葉に、心が満たされないはずがない。

 しかも松坂は去年、太っていたら投げられるはずのない、キレのあるボールをテンポよく投げていた。ストレートのスピードが90マイル(144キロ)前後でも、松坂のボールはメジャーのスラッガーのバットを押し込んでいたのだ。実際、松坂自身も去年の夏、「今のボールならメジャーのバッターには打たれない」と珍しく自信をあらわにしていたほどだった。

 準備をする時間とチャンスさえあれば、結果を出すことなど容易い――おそらく今の松坂はそんなふうに思っているのではないだろうか。ワクワクしながら野球をやれる喜びが、彼から伝わってくる。

 誰のことも、見返そうなどとは思っていない。

 準備をすれば、チャンスはある。結果を出せば、次がある。

 そんなシンプルな野球に、今、怪物の心は踊っている。

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