DeNA三嶋一輝のどん底を救った三浦大輔のひと言

  • 石塚隆●文 text by Ishizuka Takashi
  • photo by(C)YOKOHAMA DeNA BAYSTARS

 はたして、不振の原因はどこにあったのか?

「ひとつ考えられるのが、体重なんです。大学時代は75キロだったんですけど、プロに入って78キロに増えました。ただ一方で、1年目は与四球がすごく多かったんです(79個)。もちろん、プロのストライクゾーンが狭いということもあると思いますが、僕は基本的にコントロールで苦しむピッチャーではありません。何でかなと思っていると、昔から知り合いのトレーナーに『太ったからじゃないか』と言われたんです。体を絞れば、キレが増してコントロールが良くなるよ、と。そこで5キロ絞って、キャンプに挑んだのですが、確かにストライクはバンバン取れるようになりました。でもスピードがまったく出ずに、それがきっかけでフォームを崩してしまったんです。この時点では、体重が問題だったことに気づかなかったんですが、8月ぐらいにスピードが戻り、体重を計ってみたら78キロでした」

 プロ野球選手の体は繊細である。ひとつ歯車が狂うと、肉体だけでなく精神までも崩してしまうことは珍しいことではない。しかし、コンディショニングをマネジメントするのもプロの務めであり、自ら気づき、改善できなければこの世界で生きていくのは厳しい。だからこそ、三嶋が「悪夢のようだった」と振り返った2年目は、これからのプロ野球人生を考えた時に大きな意味を持つのかもしれない。

「正直、もう怖いものはないです。いい経験をさせてもらいましたし、あの2年目があったから今の自分があると思える日を早く迎えたいですね。そして今シーズンは、三浦さんに言われたように、もっと自分を出していきたいと思います。自分の投球ができれば、打たれないと思っていますから。先発へのこだわりですか? ありますよ。もちろん、与えられた場所で精一杯やるだけですが、ポジションというのは与えられるものではなく勝ち取るものだと思っています。だから、奪いにいきます」

 今シーズンからベイスターズは、ユニホームの首もとの裏に選手それぞれのスローガンがプリントされている。そして三嶋が選んだ言葉は『AUDACITY(大胆)』である。1年目のように大胆不敵に堂々としたピッチングを見せることができるのか。3年目の三嶋に注目したい。

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