「もう悩まない」。プロ5年目、斎藤佑樹の決意

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

―― いやいや、周囲からの期待がそれを許してくれないんじゃないですか(笑)。あえて言いますけど、“持ってる男”として、初登板は勝利を期待される、10勝10敗じゃ満足してくれない……そういう普通じゃダメだと周りに上げられるハードルの高さが、平常心の邪魔をすることがあるんじゃないかと思うんですけど、いかがでしょう。

「そこがやりづらいところです。でも、そうやってハードルを上げてもらえる選手でなくちゃいけないという気持ちもあります。だから開幕前まではそっとしてもらって、開幕して、勝ってから上げてもらうということでどうですかね(笑)。最初に勝ってしまえば、あとはいくら上げてもらっても大丈夫だと思うんですけど」

―― では、5年目はどんな自分をイメージしていますか。

「たぶん、余計なことで悩まないと思います。フォームは今のこれで行くと決めていますし、そこはもう悩まない。あとは、今のフォームの精度を上げるための反復練習をするしかありません。キャッチボールでもミスが出ないように、指に掛かからない一球をなくすよう心掛けて、思い描くフォームを正確に再現していくこと。それができれば、結果はついてくると思っています」

―― 夏以降は、楽しそうに野球をやれている印象がありました。

「そうですね……笑顔でいることを意識しているからかな。世の中、悲壮感を表に出しちゃっている人って、たくさんいるじゃないですか。僕もそうだったと思うんです。でも最近、よく言われるんです。ちょっと笑うだけで『楽しそうだね』とか『さわやかだね』って。ああ、笑顔でいるって大事なことなんだなと思いました」

―― 一軍では2勝でも、得たものも多い4年目だったのかもしれませんね。

「7月以降、一軍で投げた試合はそれなりの手応えもありましたし、結果的に今年は一軍と二軍を行ったり来たりしましたけど、その中でも1年間、ケガなくローテーションで回り続けることができたことは大きかったなと思ってます。そのパターンを体が覚えて、こういう感じでいけば1年間、ローテーションで投げられるんだということがわかりましたし、あとは試合ごとにいつでも簡単にストライクが取れるね、というピッチングができればいいですね。真っすぐでも変化球でも、 簡単にストライクを取れれば、それが安心感につながりますからね。僕、以前はよくそう言われたんですよ。つまり、できていたことをやろうとしているだけなんだから、できないはずはないんですよね」

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