「もう悩まない」。プロ5年目、斎藤佑樹の決意 (3ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

―― せっかくいいフォームにたどり着いたのに、そこでまた遠回りをしてしまった?

「僕、悪かった時のイメージって本当に頭の中にないんです。それがいいことなのか悪いことなのか、よくわかりませんけど(苦笑)。とにかく悪い時のイメージが頭に残らないから、悪くてもすぐに修正できる強みはある。ただ、その分、いい時のイメージが残り過ぎていて、周りの人がよかったと言ってくれても、それを素直によかったと思えない。もっといいものがあるんじゃないかと思って、突っ走れなくなるんです」

―― それでも最後、9月29日のライオンズ戦で2勝目(5回1失点)を挙げました。1勝で終わらなかったことは大きかったんじゃないかと思うのですが……。

「そうですね。あのライオンズ戦は、先発のチャンスをいただけるとわかったのが登板の3日前だったんです。しかも(大谷)翔平が風邪をひいて、さらに一日繰り上がった。あわてて準備したんですけど、時間もない。こうなったら、これがシーズン最後の登板だろうし、よくても悪くてもどっちでもいいじゃないかという思考でスタートするしかないと思ってマウンドに上がったら、初球、すごくいい感じで入れたんです」

―― バッターは栗山巧選手、136キロ、低めのストレートでした。

「あの一球は、僕もエッと思って……あれっ、この感じ、いいなと思いました。いい感じで力が抜けて、ストライクもアバウトに取れた。これこれ、こういう感じが欲しかったんだって思いました」

―― でも、そういう心境で2015年の初登板を迎えるのは難しいでしょうね。

「だから、キャンプから入れ込み過ぎないようにしなきゃと思ってます。きっと(栗山英樹)監督もピッチングコーチも、キャンプから競争、競争って煽るじゃないですか。そこに乗っかって焦ったら、僕の場合はダメだと思ってます。シーズンの最初はゆっくり、力を抜いてスタートするぐらいの気持ちの方がいいかなと思ってます」

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