大谷翔平の告白「162キロより156キロの方がいい」

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 阿部卓功●写真 photo by Abe Takanori

―― そういう日って、ストライクゾーンを高低と内外角の4分割くらいのイメージで投げているんですか。

「いえ、全部、真ん中です」

―― えっ、真ん中?

「真ん中です。全部、真ん中めがけて投げています。キャッチャーもコースに寄ったりせず、真ん中に構えてくれてますし、真っすぐがいいなっていう時は、真ん中です。だって、もったいないじゃないですか」

―― もったいないって……?

「真ん中で打たれないんですから……多少、バラけますから、コースを狙ったら、ちょっと外れてボールになっちゃうかもしれない。せっかくボールの質が高いのに、ボール1個分外れてフォアボールにでもなったら、もったいない。だったら1個分甘くてもいいから、真ん中を狙って投げた方がいいでしょ。前に飛んでもゴロかフライかっていう感じですから、いい日に限ってはそれでいい。ただ、悪い時にどうするかというのが一番大事なので、そこが課題ですね」

―― じつは、ずっと訊きたかったことがあるんですけど……。

「ハイ」

―― 去年の2月1日、栗山(英樹)監督に怒られたじゃないですか。

「ああ、そうでしたね……『ふざけんな』って言われました(苦笑)」

――  キャンプ初日、ブルペンで投げたとき、フォームがバラバラで、監督は「ウエイトトレーニングで体をデカくし過ぎたんじゃないか」って……そのことについて、その後も監督には一切、説明していないって聞いてるんですけど、あの日、大谷さんにはいったい何が起こっていたんですか。

「別に何も……(笑)。オフの間にトレーニングして体も大きくなっていたんですけど、その間、僕はあんまり投げてなかったんです。万人共通のピッチングフォームは絶対にありませんし、僕の体が変われば僕のフォームが変わるのは当然のことですから、オフの間に体が変われば、フォームが変わってくるのは自分でわかっていました」

―― でも、周りはずいぶん騒ぎましたよね。

「『大丈夫か』っていう記事も多かったですし、監督からも怒られましたけど、僕としては、そんなに悪いことしたかな、っていう感じでした。だって、音合わせの作業は、キャンプが始まってからでいいなと思っていたんです」

―― 音合わせ?

「そう、音合わせ」

―― 野球の話なのに、まるでコンサートマスターみたいなことを言い出しましたね(笑)。

「あれはですね、僕からしたら……」

(後編に続く)

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