ヤクルトに山田哲人という真のリーダーが誕生した瞬間 (2ページ目)

  • 吉村大祐(サンケイスポーツ)●text by Yoshimura Daisuke
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 DeNAとの開幕戦で2安打を放ち絶好のスタートを切った山田は、それからも好調を維持し、4月は目標を上回る32本のヒットを放った。それでも不安で仕方なかったという。

「『打てなかったらどうしよう』と試合中に考えることもあるし、寝る前に目を閉じたら『明日も試合があるのか。どうなるんやろう』って考える時もありました。ヒットは出ていましたけど、自信になることはありませんでした」

 そんな中、大きな転機となったのが交流戦だった。ここで山田は怒涛の快進撃を見せ、交流戦24試合で37安打を放ち、打率.378で首位打者を獲得した。杉村コーチは言う。

「若い選手が急激に伸びる要因としてタイトル獲得がある。交流戦で首位打者になったのは本当に大きかった」


 山田も「今回、タイトルを獲れたことは自信になった」と胸を張った。山田がはじめて自信を持った瞬間だった。

 その後も、初出場となったオールスターで敢闘賞、8月には打率.373、20打点の活躍で自身初の月間MVPを獲得した。また、レギュラーシーズンでも193安打を放ち、1950年に阪神の藤村富美男が記録した191安打を抜き、日本人右打者のシーズン最多安打記録を更新した。杉村コーチは言う。

「山田はスイングスピードの速さと手首の強さが特徴的で、ボールを呼び込んで打てる。モチベーションを上げるため、お金の話もする。宝くじの1等の当選確率は1000万分の1といわれるが、プロ野球界の1割弱の選手が1億円プレーヤー。こっちの方が確率は高いし、名誉も大きな家も、きれいな嫁さんも手に入るぞ、とね」

 押しも押されもせぬヤクルトの顔となった山田の口ぐせは、「ヒットを打つのも日常生活の一部。歯を磨くのとヒットを打つのは同じ」。これは、「当たり前のことをしっかりやろうという気持ちから」だという。

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