阪神番が見た2014。和田監督が「闘将」になった日 (2ページ目)

  • 石川隆議(大阪スポーツ)●文 text by Ishikawa Takayoshi
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 ところが、5月に入るとチームは下降線をたどった。交流戦を9勝15敗と大苦戦し、交流戦終了時点では首位・巨人と5.5ゲーム差の3位に後退していた。ここ数年、チームが一度、沈滞ムードに陥(おちい)ると、なかなか抜け出せないという悪癖に悩まされていた。このままズルズルと沈んでしまうのではないか――。球団内外にそんなムードが漂っていた。

 6月13日に行なわれた親会社・阪急阪神ホールディングスの株主総会では「このままだったら続投はなくクビやと思うけど、後がないんやったら、本気でやれ!」と厳しい意見が飛び出した。3年契約の最終年を迎えていただけに和田監督の進退をめぐる「真夏のストーブリーグ」突入も覚悟する状況だった。

 和田監督に対する批判も集中。そのひとつに指揮官が発する談話があった。「淡々と試合を振り返っているだけ」「選手も翌日の新聞を読む。あのコメントを見たら、しらけてしまう」など......。OB、評論家だけではなくコーチ、選手からも厳しい声が噴出していた。

 ただ、リーグ戦再開初戦の和田監督は違った。闘志あふれる表情と力強い口調。「絶対にこのままでは終わらないぞ!」。そんな信念と気迫がヒシヒシと伝わってきた。この印象を和田監督の会見の様子を質問したコーチに伝えると、ニヤリとしながら「そうやろ」という返事が返ってきた。そして、こう続けた。

「今まではコーチ陣と一緒に協調してやって行こうという感じだったけど、いい意味で頑固さが出てきた。それに昨日は本当なら勝たなければいけない試合を引き分けてしまったけど、監督にとっては"必ず巻き返すことができる"という手応えをつかんだ一戦だった」

 このリーグ戦再開後、最初のカードとなった中日戦は2戦目、3戦目も落とし2敗1分けで4位に転落。巻き返しを期した本拠地での「再開幕カード」としては最悪の結果に終わったが、和田監督の自信に満ちた表情は変わることがなかった。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る