谷繁元信「監督室にいる時がいちばん孤独なんです」 (4ページ目)

  • キビタキビオ●構成 text by Kibita Kibio
  • 五十嵐和博●写真 photo by Igarashi Kazuhiro

谷繁 でも、あれがあったから良かったと思うんです。やはり、お互い言うべきことを言わないとレベルが上がらない。だから今は、こっちが一方的に話すのではなく、なるべくピッチャーに答えさせるようにしています。

野村 シゲはベテランであり監督だから、選手から意見を言うのは難しい。だからこそ、選手が本音で話せるような環境を作ってあげることが大事になるよね。今年は以前のように選手に強い口調でモノを言っている姿を見なくなった気がするんだけど……。

谷繁 なくなりました。でも、監督室に選手を呼んだ時は、結構キツイことを言いますよ。もちろん、なぜこういうことを言うのかをちゃんと説明しますけどね。

野村 松井は投手陣とのコミュニケーションをちゃんと取っていますか?

谷繁 少しずつやるようになりましたね。ただ松井自身、まだ自信を持てていないというのはあると思います。その自信というのをどう身につけるかと言えば、たとえば僕だったら人の倍の練習をしたり、家に帰ってからビデオでピッチャーのチェックをしたり……。そういうことをやったという自負があったので、先輩のピッチャーにも強く言えたというのがあるんですよ。

野村 そこはこれからしっかりと教えていかないといけないところですよね。彼は、頭が良さそうに見えるんですが……。

谷繁 頭の良い悪いというより、キャッチャーというポジションは、頭の回転というか、野球脳というか、そういうのが必要になってきます。それと記憶力。覚えておくべきポイントというのがあって、松井の場合、まだそこを理解しきれていない時があります。そこに関しては、バッテリーコーチの達川(光男)さんが少しずつ教えてくれています。

野村 いちばん大事なところだけに、早く身につけてほしいですよね。

谷繁 極論を言うと、僕はピッチャーが配球を組み立てられるようになってくれたらいいと思っているんですよ。今はそこを目指すように取り組んでいます。

野村 でも、ピッチャーはわがままな人間が多いからね。“あうんの呼吸”ってあるじゃないですか。一応、頭の中で配球を描いておいて、キャッチャーのサインに頷(うなず)ける時にいちばんいいリズムが生まれる。首を振るのは嫌だし、疲れるんです。かといって、ピッチャーがサインを出すというのも違うと思うし……。

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