番記者が語る。未来の「常勝オリックス」を予感させた逆転劇 (2ページ目)

  • 波佐間崇晃(オリックス・バファローズ球団映像アナンサー)●文 text by Hazama Takaaki
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 だが、後半戦は一転して苦しい戦いが続いた。7月25日から福岡で行なわれた首位攻防戦で、福岡ソフトバンクホークスに3連敗を喫し2位に転落。以降、首位の座をどうしても奪い返せない。

 そして優勝を賭けたソフトバンクとの「10・2」決戦。試合終了とともに優勝を決めたホークスナインの歓喜の輪がグラウンドに出来上がる。その一方で、3塁側ダッグアウトにはタオルで顔を覆ったまま動けずにいるT-岡田がいた。

「勝つためには何でもやります」と来る日も来る日も試合前にバント練習を行なう姿を思い出した。「もちろん、バントの技術を高める意味もありますけど、『チームのためにプレイする』という気持ちを確認するためでもあるんですよ。とにかくチームの勝利が第一ですから」と、2010年のパ・リーグ本塁打王はさも当然の様に語っていた。10月2日に流した涙を胸に、CSでのリベンジを誓った。

 迎えたCSファーストステージの初戦。バファローズは最多勝、最優秀防御率の二冠に輝いた金子千尋で先勝を狙う。序盤、バファローズは北海道日本ハムファイターズ先発の大谷翔平から得点を奪い先制するも、中盤に金子がつかまり逆転を許す。打線も大谷からバトンを受け継いだファイターズリリーフ陣からは1本のヒットも打てず、大事な一戦を落としてしまう。しかし、ここからが森脇浩司監督の言う「12球団で一番あきらめの悪いチーム」の本領だった。

 負ければCS敗退が決まる第2戦。機先を制したのはファイターズだった。初回、二死一、二塁で5番小谷野栄一がオリックス先発のブランドン・ディクソンが投じた低めのナックルカーブを弾き返し、これが2点タイムリーになる。

 直後の1回裏、1番の平野恵一の打球はセカンドへの詰まったゴロ。一塁を駆け抜けた後に平野は右太もも裏に張りを訴えてベンチへと下がる。「去年はケガで試合に出られず悔しい思いをした。今年はとにかく試合に出続けてチームに貢献することが第一」と、平野はシーズン中に何度も口にしていたが、満身創痍の身体はついにこの時、悲鳴を上げてしまう。選手交代のアナウンスが告げられるとスタンドが大きくざわめいた。

 バファローズ打線はファイターズ先発の上沢直之からなかなかランナーを出すことが出来ない。打順が3周り目に入った6回。二死二塁から平野に代わって途中出場した原拓也が上沢の投じた外寄りの変化球を捉え、チーム初安打となるセンター前ヒットで二塁ランナーの駿太が快速を飛ばして一気にホームに帰り、ようやく1点を返す。

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