カープ一筋28年。赤ヘル復活を託された緒方孝市という男 (3ページ目)

  • スポルティーバ●文 text by Sportiva
  • photo by Nikkan sports

 監督となった今、三村イズムを自分流にアレンジしているように映る。「気持ちの強い選手をひとりでも多く育てたい」と緒方監督は言う。2014年シーズンは一時期、優勝争いをリードしながら中盤以降に失速し、最終的には2013年と同じ3位で終わった。レギュラークラスの選手の離脱がチーム力に大きく影響する。それだけに、戦力の上積みがこのキャンプのテーマだった。

「たとえひとりで穴を埋められなくても、ふたりで埋められるようにならないといけない」

 強化指定選手に指名した田中広輔や會澤翼だけでなく、一軍経験のない若手にも声をかけながら奮起を促し、平等に評価した。そこで来春の一軍キャンプ参加が決まったのが、今季一軍昇格のなかった美間優槻であり、下水流昂(しもずる・こう)だった。
田中広輔…JR東日本から13年ドラフト3位で指名され入団。1年目の今季は主に遊撃手、三塁手として110試合に出場し、打率.292の成績を残した。
美間優槻…鳴門渦潮高から12年ドラフト5位で指名され入団。高校時代は投手だったが、通算28本塁打の打力を買われ、内野手として入団した。
下水流昂…Hondaから12年ドラフト4位で指名され入団。俊足強打の外野手として期待されるも、今季は一軍昇格を果たせなかった。

 秋季キャンプが終わり、選手たちは短いオフに入った。しかし、選手たちの目はぎらついている。キャンプで評価を上げた下水流は「僕は(一軍枠に)しがみついていく立場なので、オフの間も大事。2月1日からアピールできるように練習していく」と語る。

 また、秋季キャンプで打撃改造に取り組み、叱責されながらも成長を認められた松山は危機感を募らせる。守り勝つ野球を標榜する緒方監督の下で、足に不安を抱える松山の守備位置は一塁が基本となる。今季のように外野でのスタメンを狙うには、よほど打たなければ監督の思いを変えられない。だからこそ、「僕は打てるようにならないことには試合に出られない」と、オフも休まずにバットを振り続ける覚悟でいる。

「今やっている野球を続けていけば、必ずチームは優勝できる。それを自分がやろうと、そういう思いで決意した」

 監督就任会見でそう強く言い切った緒方監督。すでにチームは"緒方イズム"によってやる気を起こさせられた選手たちで溢れている。

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