楽天ドラフト1位・安樂智大が父と交わした7つの約束 (3ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 2年秋に痛めた右ヒジの故障が響き、さらなる球速アップはならなかったが、「160キロへの挑戦はこれからも続けます」と、今年9月に亡くなった上甲監督の告別式で決意を語った。さらに、ドラフト直後の会見では、「日本という舞台で安樂が一番だと、みなさんに言っていただけるような選手になるのがひとつの夢です」と言い、理想の投手像を尋ねられた安樂は「将来的には田中将大さんのような負けないピッチャーになることです」と力強く語った。

 プロの世界ではまだ一歩も踏み出しておらず、ましてや右ヒジにも不安を残している。あまり大きな期待を背負わせるのは酷な話だが、これまで数々の試練や重圧を力に変えてきた。実際、単身赴任中の晃一さんは、高校時代の安樂と年に3~4日しか顔を合わせることがなかったが、その度に、我が子の着実な成長を感じてきたという。

「たまに食事をする時があると、顔つきが段々と男らしくなってきたなと感じました。智大なりにいろんなものを背負ってやってきた証でしょう。毎年、正月になると智大とキャッチボールをするのですが、今年は2、3球投げたところでアイツの方から『やめよう』と言ってきました。あれだけ投げることが好きなヤツが……。もしかしたら全然治ってないんじゃないか、と心配になりました。それを思えば、まずはプロの第一歩のところまで来られた。ただ、喜んでいいのは指名を受けた一瞬だけ。プロの世界でもしっかり目標を定めて、あとは達成に向けてやるだけ。『命がけで戦ってこい』と、これが父親としての贈る言葉です」

 父と幼き日に語り合った“いいプロジェクト”の最後に安樂が描いた夢は、「メジャーリーグで活躍」だった。ここからいくつの夢を自らの手で掴みとっていくのだろうか。

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