巨人ドラフト1位・岡本和真のスラッガー育成法を考える (3ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Kyodo News

 かつて日本ハムの打撃コーチを務めていた渡辺浩司氏は言う。

「入団当初の中田は変化球の対応に脆さがあったが、ストレートに関しては振り負けることなくしっかり打ち返していた。だからこそ、二軍とはいえ1年目から2ケタ本塁打を打つことができたんです。変化球の対応は慣れればできるようになる。まずはプロのストレートの速さに負けないことが大事なんです」

これまで真っすぐの対応に課題があった岡本だが、夏の甲子園が終わり、高校日本代表として出場したアジア野球選手権大会で19打数9安打。140キロを超す投手との対戦が続いた中での結果に、「思っていた以上に普通に打てたので、自分的には少し自信になりました」と話していた。いずれにしても、プロ入り後は真っすぐへの対応が成長を占う大きなポイントになっていくだろう。

 そして最後に、岡本にとって重要なカギを握るのが起用法だ。そこで高卒ルーキーながら1年目で31本塁打を放った清原和博の例を見てみたい。清原はオープン戦14試合で15三振を喫し、本塁打はゼロ。それでも開幕一軍を果たし、2戦目で途中出場ながら本塁打を放った。しかし、4月の1カ月間でスタメン出場したのは3試合のみ。調子も上がらず、出場機会を減らしていく。スタッフ会議で二軍落ちの意見が出る中、清原の一軍起用にこだわったのが打撃コーチの土井正博だった。

 土井は現役時代、18歳で4番を任された経験を持ち、歴代12位の465本塁打を放ったスラッガーだった。その土井が清原の素質にほれ込み、「僕よりレベルは断然高い。使い続ければ必ず結果を出す」と、森祇晶監督にスタメン起用を訴え続けた。ただ、当時の西武は一塁に実績のある片平晋作がおり、なかなか意見が通らない。すると土井は管理部長の根本陸夫に直談判。土井の熱意が実り、ゴールデンウィークが終わるまで様子を見ることとなったのだが、そこから清原は一気に調子を上げ、一塁のポジションを奪取。終わってみれば、打率.304、31本塁打、78打点をマークし、シーズン終盤には4番を任されるまでになった。土井は言う。

「使い切る覚悟と我々コーチの思いがなければいけません。この男を何とかチームの柱に育てようとする気持ちですね。チームを背負っていくような選手は、辛抱してでも使い続けなければいけません。いずれ恩返ししてくれると信じて使う。これが大事だと思います」

 起用法はチーム事情にもよるが、選手をどう育てるかという指導者のビジョンと熱意は、金の卵を孵化(ふか)させる極めて重要な要素だろう。

「将来、4番を打てる選手になれるように頑張りたい」と語った岡本。周囲の期待を力とし、歴代スラッガーの系譜にその名を刻むことができるのだろうか。

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