トライアウト2014。あのドラフト上位選手の再挑戦 (2ページ目)

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • photo by Nikkan sports

 このオフに大量解雇を断行したDeNAの選手で、トライアウトに参加した中には37歳のベテラン、藤井秀悟の名もあった。愛媛・今治西高から早稲田大に進学した彼は、1999年ドラフト2位(逆指名)でヤクルトに入団し、2008年にはトレードで北海道日本ハムに移籍。2010年からは巨人、そして2012年からDeNAと渡り歩き、通算83勝を挙げた。藤井にはまず、高卒3年目の選手が戦力外となることについて訊ねた。

「ベテランとして、高卒で入った子はもっともっとチャンスがあればいいのになと思いますし、若手のチャンスをつまないように育ててあげて欲しいなという気持ちがある。育成枠の制度も意味合いが大きく変わってきている。ケガのリハビリで育成契約を結ぶケースも増えていますが、ケガの選手にとってはチャンスがつながることではあるけれど、もともと育成で入った選手にしてみれば、それだけチャンスが減ることになる。難しい問題ですね」

 藤井自身は2013年シーズン終盤に左ヒジの違和感で降板して以来、一軍マウンドに立つことがないまま、このオフに戦力外通告を受けた。

「左ヒジに問題はありません。このトライアウトは、自分が『まだ投げられますよ』ということを証明し、不安要素を取り払ってもらうチャンスと思っていました。一軍で投げていない間は、何を言っても、ヒジが悪いんじゃないかと思われてしまいますから」

 藤井のトライアウトは変化球主体のピッチングで、ふたつの四球と、ふたつのゴロアウトに終わった。

「可能性がある限り、チャレンジしていきます」

 藤井の直前にマウンドに上がったのが、同じ37歳の江尻慎太郎だ。仙台第二高校を卒業後、2年間の浪人生活を経て早稲田大に進学した苦労人で、大学野球部の2年先輩が藤井だった。江尻は2001年のドラフトで日本ハムに自由獲得枠で入団。2010年にトレードでDeNAに移籍し、今年はソフトバンクに所属していた。その江尻は、奇しくもDeNAの藤井と同じ「00」の背番号を背負ってきた。

 江尻のトライアウトはMAX145キロのストレートで押す投球で、一本のヒットも許さなかった。終了後は晴れやかな表情で、トライアウトを振り返った。

「藤井にいい形でバトンを渡せて良かった。38歳の変化球投手なんて、誰も興味ないでしょう(笑)。(ソフトバンクの日本一も)二軍で自分の役割が果たせたことで、少しは貢献できたという思いはあります。NPB(日本野球機構)の球団から声をかけてもらえたら」

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