もうひとりの二刀流革命児。雄平の飛躍を支えた「技」 (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 スライダーとカーブを頭に置いて、ストレートを狙っていた雄平に、大谷は初球、真ん中高めのストレートを投げた。雄平のスイングがインサイドアウトの軌道を描き、バットがボールの内側を叩く。レフト方向へ上がった打球は美しい弧を描き、失速せずにスタンドへ突き刺さった。雄平はこう話した。

「逆方向へ意識して打つ時もあるんですけど、たまたま行っちゃった時もあるんです。あの時がそうでしたね。あれは大谷投手の真っすぐに完全に遅れました(苦笑)。レフトに飛ぶ自分のポイントがあるとしたら、それよりも差し込まれた。普通ならファウルになってしまうんですけど、ボールがそのポイントよりも体の近くに来たんです。だから遅れた分、結果的に左に飛ぶポイントよりも引きつけて、しかも体に近くで捉えることができた。そこがちょうど、左手でグッと押せるところでした。だから、遅れたけど結果的にタイミングが合って、パアーンと打ったらレフト方向へ強い打球が飛んだんだと思います」

 雄平は今年、30歳になった。

 プロ入りして12年、野手になって5年目。

今シーズン、雄平は初めて"レギュラー"としての1年を過ごした。

 141試合に出場、597打席に立った。開幕戦では2番、その後はスワローズの5番として、時には4番として、スタメンに名を連ね続けた。リーグナンバーワンの強打を誇ったスワローズの中軸として、フルシーズンを戦い抜いたのだ。それでも雄平は、頭を垂れることを忘れない。それだけ苦しんできたからなのだろう。

「レギュラーとは思ってないんです。本当に、まだそう思ってません。今年はこうやって試合に出させてもらって、チャンスを与えてもらっている立場なので、そのチャンスを生かして、結果でその座を渡さないように、毎日毎日、やっていかなきゃいけないと感じてます」

 今シーズン、雄平を支えた技術――。

 それが、大谷から打ったホームランに象徴される、逆方向へ強い打球を打つテクニックだった。今シーズン、雄平が打ったホームランは23本。そのうち、センターが1本、ライトが14本、8本がレフトへ運んだホームランだった。ホームランだけでなく、ヒットも逆方向への打球が多かったのは、バッター雄平のルーツが理由になっていた。

「野手になってから、逆方向に打つ練習ばっかりしていました。どうせ長打を打てるバッターにはなれないと思ってましたから、まずは逆方向に転がして、走って、内野安打の可能性を追いかけようと思っていたんです。でも、難しかった。逆方向を意識すると、インコースがうまく打てなくなる。ファームで最初、逆方向に打とうとしていたら、インコースばっかりを攻められた時期もありました。それでは自分のスキになってしまいますから、いろんなところを打てるようにしないといけない。逆方向へ打つ意識を持ちながら、インコースが来たらパンッと払う......これは本当に難しかったですね」

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