1985年の再現。ロイヤルズが勝てば阪神も勝つ! (3ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 そして最大の共通点は、それぞれ栄光の後に長い暗黒時代を迎えたことだろう。阪神は1987年に最下位に沈むと、以後15年間で10度の最下位という地獄を味わった。ロイヤルズは阪神をはるかに上回る暗黒時代に突入。1985年以降は今年までポストシーズンに出場したことは一度もなく、特に2004年から3年連続100敗以上を記録し、4年連続地区最下位という散々な結果に終わっている。

 このように何かと共通点が多い両チーム。そこで、だ。今年の阪神とロイヤルズはどうか。まず、今シーズンのロイヤルズはどんなチームだったのか。

 ネッド・ヨスト監督が「ウチはホームランで得点を奪うチームではない」と言うように、長打力があるわけではない。しかし、メジャートップの153盗塁を記録するなど、機動力を駆使して得点を奪っていく。そうして挙げた得点をメジャー屈指のリリーフ陣で守り抜くのだ。

 対する阪神は、和田豊監督が「ウチもホームランで得点を奪うチームではない」と言ったかどうかは定かではないが、リーグ5位の本塁打数(94本)を見れば、長打力があるチームでないことだけはわかる。だが、ロイヤルズのように機動力を生かすのではなく、盗塁数はリーグ最少の55個。それでも、勝負どころでの効果的な1本で得点を稼ぎ、リーグ3位の599得点をマークした。

 ただロイヤルズとの共通点は、クローザーの呉昇桓を中心としたリリーフ陣で逃げ切るということだ。特にCS以降の戦いでは、安藤優也、福原忍のベテランコンビの他に、左腕の高宮和也、若手のホープ・松田遼馬が急成長し、磐石のリリーフ陣が完成した。つまり、少ないチャンスをものにして継投で逃げ切る。得点へのアプローチは違うが、目指す野球の方向性は同じなのだろう(たぶん)。

 ちなみに、ロイヤルズ唯一の日本人である青木宣親は早稲田大学出身。その時のチームメイトで同級生だったのが阪神のキャプテンを務めている鳥谷敬だ。

 そして1985年と今年の阪神を比べてみると、ある共通点を発見してしまった。それが助っ人の貢献度である。1985年はバースが三冠王を達成し、ゲイルがチーム最多の13勝を挙げた。そして今年は、マット・マートンが首位打者、マウロ・ゴメスが打点王、ランディ・メッセンジャーが最多勝&奪三振王、呉昇桓はセーブ王と、助っ人全員がタイトルを獲るという偉業を達成した。これも29年ぶり吉兆の前ぶれか!?

 過去と現在を並べて、こうして符合するものを探したり、つなげようとしたりすることも野球の楽しみのひとつではないだろうか。最後に、映画『フィールド・オブ・ドリームス』の原作者であるW・P・キンセラが残した、この金言を紹介したい。

「たとえば、野球場のホームプレートに立ってふたつのファウルラインを永遠に延長していく。するとその線の中には世界のほとんどが入ってしまう。そんな神話的レベルの虚構の世界を見せてくれるのが野球なんだ」

 阪神とロイヤルズの奇妙な符合も、野球というスポーツだからこそ生まれたのではないだろうか。ちょっと大袈裟だったかな……。

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