秋山監督辞任を乗り越え、ソフトバンクは再び輝けるか? (3ページ目)

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro
  • 繁昌良司●写真 photo by Hanjo Ryoji

 ソフトバンクの“開幕投手”を務めるのは、4年連続2ケタ勝利のエース・攝津正でも、チーム最多に並ぶ11勝を挙げたスタンリッジや中田賢一でもなく、難病から復活した左腕・大隣憲司である。大隣は今季9試合に登板して3勝1敗だが、防御率1.64の安定感。リーグ優勝をかけた「10・2」決戦でも6回無失点と好投し、大一番でも本来の力を発揮できることを証明してみせた。それについて、大隣はこのように自己分析する。

「12勝した2年前から取り組んでいるメンタルトレーニングの成果だと思います。以前の僕ならば、『負けたら……』とか『優勝できなかったら……』とか、自分で勝手に背負い込んでいました。もともとマイナス思考なんですよ。それをトレーニングの成果で変わることができたのもあります。もうひとつは嫁のおかげです。嫁は究極のプラス思考。会話をしているだけで『こんな考え方もあるんやな』と感心したことが何度もありましたから」

 昨年、大隣は国指定の難病「黄色靭帯骨化症」を患(わずら)い選手生命の危機に立たされた。思えば、術後初めてマウンドに立ったのは、1年前の今頃(昨年10月22日、フェニックスリーグ)だった。

「日南の球場でしたね。嫁も宮崎市内からさらに1時間以上電車に揺られて来てくれました。予定通りに1イニング。ただ、たった5球で終わってしまい、『あれ?』って感じでしたね。まさか、それから1年後にこのような立場まで戻れるとは想像もしていませんでした。(CS開幕へ)あの『10・2』とは少し違いますが、同じようにワクワクした気持ちです。チームに流れを持って来られるような投球をしたい」

 一方の打撃陣は、ペナントレースのラスト5試合で起用された「1番・柳田悠岐」でCSも臨む目算だ。今季99試合で1番に座った中村晃は6番で起用される見込み。「勢いの柳田」と「粘りの中村」。短期決戦ということもあり前者を採ったソフトバンク打線。自身初の全試合出場を果たし、打率.317、15本塁打、33盗塁をマークした柳田で先手を打ちたいところだ。一方の中村は巧打タイプだが、実は得点圏打率がリーグ2位の.343と勝負強く、6番としても機能する期待が高い。

 激震に揺れた中でいよいよ迎えるCSファイナル。しかし、ソフトバンクナインの心はひとつに固まっている。

「秋山監督をあと2回胴上げしよう。最後は日本一で送り出そう」

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