メッセ&能見、巨人撃破へ1年越しの思いを語る (2ページ目)

  • 岡部充代●文 text by Okabe Mitsuyo
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 しかし、昨年のCSファーストステージ初戦の先発は、ルーキーの藤浪晋太郎だった。高卒新人ながら10勝したのはあっぱれだったし、甲子園での「勝ち運」も持っていた。16年ぶりにAクラス入りし、初のCS進出を果たして勢いに乗る広島に対して、阪神は8月下旬の対巨人戦3連敗から大失速。その流れを逆転させるため、若い力に懸けたとしても不思議ではない。「負けても残り2戦で2勝すればいい」と考えれば、「初戦が最もプレッシャーがかからない」という解釈も成り立つ。いずれにしても、首脳陣は藤浪起用に踏み切った。

 結果は1-8の大敗。藤浪は5回4失点でマウンドを降りた。そして、第2戦に先発したメッセンジャーは6回途中2失点ながら、打線の援護に恵まれず負け投手となった(最終スコア4-7)。

 それから1年後――CSが始まる前、メッセンジャーは昨年以上の自信とプライドを持って、こう言った。

「(初戦は)シーズンで一番安定した成績を残した人間が投げるべき。もちろん、自分が投げるべきだと思っている」

 日本人にはなかなか言えないセリフだが、チーム関係者によれば、昨年からずっと言い続けていたのだという。首脳陣に不満をぶつけたわけでも、もちろん、藤浪を責めたわけでもない。ただ、メッセンジャーの心の中には、消化しきれない「何か」がくすぶっていた。

 それがモチベーションになったかどうかは分からないが、今季、メッセンジャーはチームで最も安定した成績を残した。1年間ローテーションを守り、投球回数はリーグで唯一の200イニング超え(208回1/3)。13勝で初の最多勝に輝くと、226個の三振を奪い2年連続奪三振王のタイトルも獲得した。和田監督は初戦先発を決める際、「迷いはなかった」と、メッセンジャーを指名した。ちなみに今年、メッセンジャーは甲子園では広島打線を完璧に封じたものの、マツダスタジアムでは打ち込まれていた。それでも「球場は関係ない」と同監督。たとえマツダでの開催になっていたとしても、メッセンジャーを起用したと言う。

 指名を受け、「最高に光栄だった」と話すメッセンジャーは、広島打線を8回4安打無失点に封じ込めた。そして、福留孝介の放った起死回生の一発で勝利投手となった。昨年のCSで勝ち越しのきっかけとなる二塁打を許した菊池涼介を4打数無安打に抑えたことも、「リベンジ」のひとつだったに違いない。

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