日本ハムのキーマン・中島卓也が語る「2番打者の極意」 (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Nikkan sports

 中島がもっとも印象に残っているという、その打席。イーグルスが3-2とリードした7回、則本は初球をインローにカーブ、2球目にはアウトローいっぱいにストレートを決めて、中島をあっという間に追い込んだ。しかし、そこから中島が粘る。

「フルカウントに持ち込んでから、何球粘ったのかな(打ったファウルは7本、そのうちフルカウントから打ったファウルは6本)。一塁ランナーが(西川)遥輝 で、フルカウントだとスタートを切らなきゃいけないんで大変だったと思うんですけど(笑)。でも、あの打席はボール球もしっかり見極めることができたし、則本が我慢強くストライクゾーンに投げ続けてきたのをこっちもしっかりカットできた。しかも、そのフォアボールが逆転につながったので、満足感は高かった です。粘った後のヒットも嬉しいんですけど、フォアボールのほうが嬉しいかな。相手ピッチャーも嫌だと思うし、自分が守っていたとしても、粘られた挙げ句 のヒットよりフォアボールのほうがイヤな感じがしますからね」

 今シーズン、中島が461打席で相手ピッチャーに投げさせた球数は、1926球。一打席あたりに換算すると、4.18という球数になる。これはパ・リーグの平均3.92を大きく上回る。打ったファウルの数は、396本を数えた。中島は、ファウルを打つための技術をどう考えているのだろう。

「まずはバットの軌道ですね。レベルスイングを心掛けて、ボールを線で捉える。追い込まれるまでは狙い球をしっかり振りに行って、ヒットを狙います。でも、ツーストライクを取られたら、どんないいバッターでも打率は下がります。ましてや僕なんかが、追い込まれてからヒットを打ちにいっちゃダメだと思ってるんで、ツーストライクからはアプローチを変えます。ヒットを打ちにいってファウルになるのではなく、最初からファウルを打ちにいく感じですね。まっすぐを狙って、ポイントをできるだけ体の近くにする。変化球が来たら、タイミングが合えばヒットになることもありますけど、ファウルで逃げる感じ。まっすぐはギリギリまで引きつけて、三塁のファウルゾーンを意識的に狙います。もちろん、追い込まれてからは甘い球でもファウルを打ちにいきますよ。ヒット狙いじゃな くて、フォアボール狙いですから......何とかフルカウントまでは粘ろうと思ってるんです」

 ファウルで粘って、フォアボール。それが中島の目指すところではあるが、今シーズンはファウルで粘った挙げ句、ライナー性の当たりを外野の間に飛ばすケースも目立った。明らかに、打球が力強くなっている。

「体に力がついたこともあって、まっすぐに力負けしなくなったなと思います。去年もそういう感じがあって、じつは今年の春のキャンプでは、バッティングを変えてみようと思ってトライしたことがあったんです。でも、それがあんまりよくなくて、バットの軌道が悪くなった。ちょっと欲が出て(苦笑)、今年は力強い打球を打とう、ボールを遠くへ飛ばそうと、下半身を回して打ってみたんです。そうしたら体が開いて、バットがボールを点でしか捉えられなくなってしまいました。体が開いちゃうと、打てないんですよね。強く振ろうと思って体も一緒に振っちゃうと、バットが遠回りして逆に引っかけてしまう。セカンドゴロを打つようになると、僕、ダメなんです。オープン戦の頃までは、練習でも試合でも全然ダメで、開幕前には元の線で捉えるレベルスイングに戻しました。ただ、すぐには戻らなくて、開幕からしばらくは苦労しましたね」

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