日本ハム若手が語る「稲葉さんが残してくれたもの」 (3ページ目)

  • 佐々木亨●文 text by Sasaki Toru
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 今シーズンからセカンドのレギュラーに定着したプロ6年目の中島卓也(23歳)もまた、稲葉から多くのものを学んだひとりだ。

「攻守交替の時もそうですし、凡退した時も必ず一塁まで全力疾走をする。口で言うのは簡単ですけど、ずっと実践しているのは本当に凄いことだと思います。野球人としての鑑(かがみ)です。若い選手にも声を掛けてくれますし、こっちが質問すれば必ず言葉を返してくれる」

 思えば昨年、1年間だけコーチ兼任となった2013年のシーズン前に、稲葉は大谷翔平を含むその年の新人に向けてこんな言葉を残していた。

「とにかくガムシャラにやってほしいですね。一生懸命にやることは当然ですし、ファイターズのモットーである最後まで全力でやるという気持ちを持って取り組んでもらいたいと思います」

 それは自身が歩んできた野球道そのものであり、稲葉の人生観を象徴するものだったと言える。再び、中島が言う。

「昨年、一昨年と、僕はチャンスの場面で代打を送られて、その代打の選手が結果的に打ってヒーローになったことがありました。もちろんチームが勝ったことは嬉しかったですけど、自分としては悔しかった。そんな時、稲葉さんは『こういう悔しさをバネに頑張れよ』って声をかけてくれました。ジーンときましたね。嬉しかったし、もっと頑張らなきゃいけないと思いました」

 中島は稲葉にかけてもらった言葉が飛躍のきっかけのひとつになったとも話す。

 惜しまれながら引退する稲葉。彼が残したものは、日本ハムにとって大きな財産となるはずだ。「稲葉イズム」――それは次世代を担う若手たちに、しっかりと受け継がれている。

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