日本ハム若手が語る「稲葉さんが残してくれたもの」

  • 佐々木亨●文 text by Sasaki Toru
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 ベテランからの言葉は、若手選手にとってまさに金言だった。今シーズン、なかなか出場機会に恵まれなかった杉谷は、稲葉のこんな言葉に救われたという。

「僕が試合に出られない時には、ベンチでずっと声をかけてくれて......。『お前が今やっていること、練習していることは、みんなが見ている。いつかお前の時代が来るんだから、絶対に腐ったらダメだぞ』と。この言葉は今も胸に響いています」

 稲葉のもとには、自然とチームメイトが集まった。そして稲葉もまた、年齢に関係なく彼らに歩み寄った。

 今や日本ハムの不動の4番に成長した中田翔(25歳)は、試合後に行なわれていた稲葉によるマンツーマン指導で才能を開花させたひとりだ。

「稲葉さんが日本ハムにいなかったら、今の僕はなかった。プロでやっていくことの厳しさを教えてくれましたし、継続することの大事さも学びました。それに野球以外のこともいっぱい教えてくれた。僕にとって稲葉さんはお父さんのような存在でした」

 またプロ4年目の谷口雄也(22歳)は、シーズンオフの自主トレを稲葉とともに行なってきた。

「稲葉さんは、とにかく『聞き上手』なんです。どんなにくだらない話でも聞いてくれる。だから話しやすい。以前、一度聞いたことがあったんです。『聞き上手ですね』って。そうしたら、稲葉さんは『オレも苦手な人はいるけど、そういう人の話のなかにも良いヒントがあるかもしれない』と言うんです。稲葉さんの懐(ふところ)の深さを知りました」

 さらに谷口はこう続ける。

「野球をしていく上でも、生活をしていく上でも、稲葉さんは僕の柱になる人でした。野球に対しての考え方だったり、取り組み方だったり、そういうことがすごく勉強になりました。そばにいるだけで何かを学べる存在。日本ハムというチームに入って、稲葉さんという選手が近くにいてくれたことが大きかった」

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