V3達成。脱・巨人スタイルを確立した原監督の名将度

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 そんな中、山崎武司氏は「原監督は打線が"線"としてつながるように常々考えていた」と評価したが、「選手の立場を考えると、厳しい采配だったと思う」とも語った。

 特に目を引くのが4番で、阿部の52試合を筆頭に、村田44試合、セペダ18試合、アンダーソン14試合、長野久義6試合、高橋由伸2試合、ロペス1試合と、実に7人もの選手が4番に座った。しかも、これらの選手はそれ以外の試合で、7番から9番の下位打線に置かれることもあった。

「4番から下位打線を打たされるのは、正直、選手として気分のいいものじゃない。『じゃあ、打って結果を出せ』と言われるのもわかりますが、4番打者に対しては『お前を信じていくしかない』という構えが欲しいよね。結果的に優勝しましたけど、僕は『あまり打線を動かさすべきではない』と思っています。もしかしたら、打順を固定した方がもっと楽に勝てたかもしれない。ただ、勝ったということは、それが正解だったんです」(山崎氏)

 打線が苦しむ中、投手陣はチーム防御率3.62とリーグトップの成績を残した。しかし、リリーフ陣に限っていえば防御率4.08と昨年の2.57を大きく下回った。試合終盤に追いつかれる場面も多く、チームが苦戦した大きな要因となった。

 ヤクルトの小川淳二監督は、今年の巨人について次のように語ってくれた。

「去年のような絶対的な強さはなかったけど、勝負どころでの強さを感じました。印象に残っているのは8月19日の試合。調子が良くなかった阿部に延長で勝ち越しのホームランを打たれたのですが、そういう勝負どころでの強さが今年の巨人にありました」

 与田氏も、小川監督と同じような印象を抱いている。

「リリーフ陣の防御率が4点台と悪化しましたが、たとえばリードした場面で登板しても同点まではOKという指示があったと思います。それは、接戦に持ち込めばなんとかなるという考えが原監督にあるからで、特に試合終盤になれば鈴木尚広という足のスペシャリストや、高橋由伸という代打の切り札がいる。彼らが登場したら、1点を取りにいく合図というか、スイッチが入ったように得点につながりました。そして、そのスイッチを入れるタイミングが絶妙でした。これまでのように投打で圧倒するという試合は少なかったですが、接戦に負けない本当の強さを感じました」

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