2014.08.20

吉井理人×石井貴が語る「投手コーチのお仕事」

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • 甲斐啓二郎●写真 photo by Kai Keijiro

石井貴(いしい・たかし):1971年8月25日、神奈川県出身。藤嶺藤沢高から三菱重工横浜を経て、93年ドラフト1位で西武に入団。気合いあふれる ピッチングで先発、中継ぎ、抑えとフル回転の活躍を見せる。04年にはシーズン1勝ながら、中日との日本シリーズで2勝を挙げMVPを獲得。07年に現役 を引退。プロ14年間の通算成績は321試合に登板し、68勝58敗13セーブ、防御率3.78。現役引退後は08年から4年間、西武の二軍投手コーチを 務め、12年から2年間は一軍の投手コーチを務めた。今年からFOX SPORTSをはじめ、解説者として活躍中。

吉井 二軍では技術的なこと以外にも教えなきゃいけないことがいっぱいある。人間としても成長してほしいですからね。社会の仕組みだとか、そういうことも教えていかないといけない。ほとんどの選手は引退後、野球ではなく他に仕事につくわけですから。

石井 二軍は選手が多いですし、すべての選手に手取り足取り教える時間がありません。そういう意味では、自分で考えながら練習に取り組んでくれる選手は理想的です。もちろん、選手からアドバイスを求められた時は、それに応えられるようにしなければいけません。

―― 投手コーチ時代、自分で考えながら練習に励んでいた選手はいましたか。

吉井 ダルビッシュ有(レンジャーズ)がそうでした。彼に関しては、こっちから言うことは何もなかったですね。変なことを言って、ヘソを曲げられたら困るので、ただジーっと見ていました(笑)。

石井 投手コーチ時代ではないのですが、松坂大輔(メッツ)はそういう選手でした。ボールの握り方とか、すごく研究していましたね。それにアイツは、18歳の時から日本経済新聞を読んでいましたから(笑)。「やっぱり違うなぁ~」って。

吉井 言い方は悪いのですが、そういう選手はコーチが何も言わなくても勝手に成長してくれます。

―― 一軍のコーチはどうですか。

石井 一軍投手コーチは、一生懸命になりすぎてはいけないと思っています。

吉井 一軍というのは、監督の野球観が絶対の世界なんです。こっちがいろんなことを思っても、実行できないことが多い。ピッチャーに対して、「こんな状況で登板させてゴメン」と何度も思いました。自分を押し殺すのが大変でしたね。ただ、一軍では投手コーチと選手の信頼関係が強すぎると、チーム全体を見た時に、良くない方向に向かうことが多いですね。監督とコーチの戦術が合致していれば何の問題もないのですが、それが違う場合、やはり投手コーチはピッチャーを守ろうとしますよね。そうなると、チームの中にもうひとつ小さなチームができてしまう。これは良くないと思います。