785日分の強さを身に付け、斎藤佑樹は生まれ変わった (3ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi

 1番岡田、2番鈴木、5番角中、8番金澤、9番加藤。

 斎藤がストレートを捉えられたのは、ことごとく左バッターだ。

 その左バッターには、ストレートをストライクゾーンに投げて勝負しようとしても、指にかからず捉えられてしまう。

 ならばストレートを見せ球に、変化球をストライクゾーンに投げよう。

 スライダーをストライクゾーンに投げてカウントを稼ぎ、シュートで詰まらせ、フォークを振らせる。この日に奪った三振7個のうち、6個がフォークだった。

 思うようなストレートを投げられない。

 ならば、変化球をストライクゾーンへ投げていく。

 同時に、ストレートを見せ球に使う。

 ファームで作り上げたスタイルとは、真逆の発想である。

 この発想を転換する力と、発想したことを実践する力が、今の斎藤には備わっている。打線が6回表に逆転してくれるまでは、確かに我慢が必要だった。しかし 2週間前のホークス戦の後、「このピッチングを続けていれば勝ち星はついてくる」と話していた通り、ストレートを変化球に切り替えても、自信を持ってストライクゾーンに投げることができれば、今の斎藤は点を与えないピッチングができる。となれば、この785日ぶりの1勝は“必然の勝利”だったと言っていい。斎藤はこう続けた。

「真っすぐが使えなくなったら、僕の得意な変化球も生きなくなるので、真っすぐは使えなくても使おうと思いました。とにかく今日は全然、良くなかったので、気持ちだけは負けないようにと考えていました」

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